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内視鏡(腹腔鏡)下手術
内視鏡下手術とは?

色々な病気に対して手術が必要なとき、従来は、お腹や胸を大きく皮膚切開して手術をしなければなりませんでした。ところが、近年の様々な医療機器の発達により、現在では従来のように大きく皮膚を切り開くことなく、小さな(直径2mm〜10mm)の穴を皮膚に数ヶ所あけ、この穴だけで手術をすることができるようになりました。
実際は、一つの穴(直径10mm)からCCDカメラ(5mmの内視鏡)を入れ、テレビモニターでお腹(胸)の中を観察しながら、その他の穴からやはり小さなマジックハンドのような器械(直径2〜10mm)を挿入し、お腹(胸腔)の中で手術を行います。

傷が小さい為、痛みも少なく、治療に要する時間も費用もその負担が軽く、患者様に優しい治療法と云えます。

内視鏡下手術の利点

内視鏡(腹腔鏡)下手術にも、従来の手術と比べ長所と短所があります。手術の方法を選択するにあたっては、このメリット、デメリットをよく考え、その人その人に最適な手術方法を選ぶことが大切です。

内視鏡下手術のメリット

皮膚に入れる傷が圧倒的に小さい為・・・
1. 術後の痛みが少ない。
2. 皮膚の傷が目立たない。
3. 早期退院、早期社会復帰が可能。
お腹の中の癒着が少ない。
お腹や胸を大きく開ける手術だと、癒着(お腹や胸の中で、腸と腸、或いは腸と腹壁、または肺と胸膜のくっつく事)が生じます。内視鏡下手術だと、お腹、或いは胸を、殆ど開ける事がないので、この癒着が少なくなります。

内視鏡下手術のデメリット

手術上で十分な視野が確保しにくい場合がある。お腹や胸の中の一部がカメラの死角になり、見落としが生じる事があります。必要により、手術途中で開胸、開腹手術に変更する事がある。

 

内視鏡下手術に適した疾患

様々な病気の中で、内視鏡(腹腔鏡)下手術ができる疾患と出来ない疾患があります。例えば、肝臓移植などは肝臓を丸ごと取り替える訳ですから、お腹に小さな穴をいくら開けても、内視鏡下で手術をする事は不可能です。ここでは、内視鏡下手術が可能な病気をいくつかお示しします。

内視鏡下手術が可能な病気
乳腺 良性のしこり(繊維腺腫など)
胸部 気胸
腹部 胆石症・胆のう炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍穿孔・腹膜炎・脾機能亢進症(脾腫)・急性虫垂炎
その他 腹壁瘢痕ヘルニア ・鼠径ヘルニア(脱腸)など

悪性腫瘍、特に胃癌、大腸癌、肝細胞癌などに対しても内視鏡手術をする事ができますが、これらの疾患に対しては、内視鏡手術をするにはかなりの条件がつきます。いくら傷が小さくても癌を取り残しては意味がありません。これらの手術については、従来の開腹手術の方が良い場合が多いと言えます。

内視鏡下手術方法

では、実際にどのように手術が行われるのでしょうか?

麻酔は全身麻酔で行ないます。

手術室に入って静脈注射をすればやがて眠ってしまい、眼が覚めた時には手術は終わっています。

気腹を使います。

お腹の中に炭酸ガスを入れ、お腹を膨らませます。お腹がドーム状になり、お腹の中の胆嚢や虫垂、腸などがよく見える様になります。

内視鏡(腹腔鏡)カメラで観察します。

お腹の穴の一つからカメラを挿入し、ドーム上になったお腹の中をよく観察し、このカメラから映像を見ながら、細いマジックハンドの様な器械で手術をします。

傷の処置

お腹の傷は、傷一つにつ1〜3針縫いますが、早期に退院できれば、抜糸は外来通院でもかまいません。

 

内視鏡下手術におけるリスクは?

この手術方法に限らず、全ての医療行為には大なり小なりのリスクが伴います。絶対安全という方法は、残念ながらありません。但し現実には、内視鏡下手術の治療における偶発症、或いは合併症の起こる確率は極めて少ないと言えます。

考え得る合併症としては

【麻酔による合併症】
全身麻酔をかけますので、従来の手術と同様、ショック、不整脈などの合併症は稀ですが、起こる事があります。
【手術中・手術後の合併症】
1. お腹の中で出血が止まらず開腹して止血しなければならない。
2. 不整脈が出る場合、お腹の中の炭酸ガスが血液に入り、炭酸ガス血症になる。
3. 炭酸ガスで塞栓を起こす。肺塞栓、下肢静脈塞栓症。
4. 皮下気腫
これらの合併症の予防に努めて手術を行っています。

 

入院日数

身体に負担のかからない手術という事で、アメリカでは腹腔鏡下胆嚢摘出術の時は、手術後3日間位で退院します。日本人はそこまで体力がないようです。下記のような日数が平均的です。
腹腔鏡下胆嚢摘出術 4〜7日間 ・腹腔鏡下虫垂切除術 2〜7日間

ドクターの一言

これらの手術は、胸やお腹を大きく開ける従来の手術に比べ、確かに、「患者様に優しい」という意味では、格段の進歩と言えます。しかしながら、 患者様の精神的肉体的負担を軽くする事も大切ではありますが、最も大切な事は、当たり前の様ですが、「患者様が困っている病気を安全確実に治す」という事です。痛みや傷の事ばかり気にして最も大切な病気の治療が疎かになっては本末転倒ということになります。そこで、一人一人の患者様に対しての診療プロセスは、以下の様に考えています。

1.患者様の今の訴えに対して、正確に診断をつける。
2.侵襲(痛みや辛さなど)を伴う手術は出来るだけ避け、薬などで治らないか検討する。
3.どうしても、手術でしか改善できないときは従来の手術方法(開胸・開腹)が良いのか、内視鏡手術が良いのか、もう一度患者様と相談しながら検討する。
4.患者様が病状、治療方針を十分理解し、納得する。
5.出来るだけ合併症を起こさないように、細心の注意を払いながら治療を進める。

新しい治療法が万能で全てに良いわけではありません。それぞれの患者様の病状とニーズを把握し、その患者さんが満足する治療法を選ぶ事が肝要と思われます。病状は、まさに一人一人千差万別であり、誰一人として同じ状態の人はいません。従って個々のケースについては、当院外科外来にて直接、ご相談に応じたいと存じます。